平成6年に改修工事を行い、同年12月27日に守衛室・正門とともに国の重要文化財に指定され、一階は展示室、二階は講堂として活用しています。100年を超える伝統の活用であります。韓国の女優チェジュウが出演した韓国ドラマ「スターの恋人」では、お金持ちの屋敷として使われました。また、この右にあるいわゆる100年ピアノは、発掘された的場名誉教授に本日ご臨席して頂いていますが、復活した現役としてコンサート等で活用されています。 学士課程の4年間は、多くの場合青春の迷い道にトラップされます。プライドとの格闘で、自分のプライドとうまく付き合う術を手に入れるまで時間がかかることがあります。ヘイゥフ衲ケルヘ-ヨミケラ羇ハヘ」、appニスフィ、博士後期課程と進むにつれ、霧が晴れるように自分の進む道が見えることがあります。そのようなときは、何か成功体験が積み重なって、自信が出来た時です。 皆さんは大学院に入学されたのですから、高校までの文系と理系という分類が研究の分野では通用しないことをご存知と思います。あえて文系と理系という言葉を使いますがご理解頂けると信じています。理系の学問は積み上げ方式です。それは研究対象が物質である場合、とても効果的です。世界中に同じことを研究している仲間がいます。物質は、時間と空間移動で不変です。文系の学問は、個性的で説得的です。人類が持つ最高のツールである言語を用い、発信します。このパワーは強烈で、一本の論文で世界を変えることができます。 生活環境系の学問は、ユニークです。理系の学問が世界共通であること、文系の学問が地域や時代で個別的でありながら、普遍性、ユニバーサリティがある ことと比較して特異なイメージがあります。生活環境学は、人の生活に役立つものに興味の焦点がありますが、工学とは違います。使用者の視点を重く見ます。学問的にはユニークですが、今の時代には面白いと注目を浴びています。 ご存じの方も多いと思いますが、学部では平成26年度の改組を予定しています。大学院の改組は学年進行で、学部改組後の4年後になります。 博士後期課程にご入学の皆さん、あなた方は専門家の入り口にいます。皆さんは既に人生で幾つかの重要なチョイスをして来られたと思います。 幸福を得るチャンスは人によらず平等に訪れます。チャンスは、準備をした者のみに微笑むと言われます。パスツールの言葉で「チャンスは準備された心に味方するChance favors the prepared mind.」があります。研究に行き詰る。ネガティブな結果しか出ない。苦しいものです。しかし、苦闘している者にチャンスは訪れ、それを得ることができます。 研究を続けていると、創造の喜び、発見の喜び、何物にも代えがたい歓喜が時に舞い降りるものです。皆さんの1人でも多くが、この研究の喜びを味わってくれることを願っています。 話はかわりますが、ここに鎮座されている像は、錦織竹香さんという方です。奈良女高師教授兼初代寮務主幹となり、各地から集まった学生の生活指導も含め、女子高等教育に尽した方です。不思議な縁があり、私の実家とそう遠くないところに生家があったようです。衣服の専門家でもあったのですが、作法の教科書が残っています。立ち居振る舞いの基本は、不思議なことに研究の成功とも関連するのです。研究で立派な仕事をすることが、大学院で学ぶことですが、品格もまた重要です。品格は万国共通で、良き人脈を作ることができます。海外も含めて尊敬できるライバルを作ってください。人生の宝物になります。 最後になります。この奈良の地で、切磋琢磨され、知能・品格ともすばらしいリーダーに成長されることを祈念してお祝いの言葉といたします。 平成25年4月4日 奈良女子大学長 今岡春樹